第27回
VIDEO ACT! 上映会
〜ハンセン病隔離政策〜
上映会報告

『あなたに会う日のために〜長島・愛生園での半世紀〜』『ソロクト・楽生院〜日本が残したハンセン病隔離政策〜』

報告文:小林アツシ
第27回 ビデオアクト上映会は「ハンセン病隔離政策」をテーマに行われた。

最初に上映された作品は『あなたに会う日のために〜長島・愛生園での半世紀〜』。
31歳の時にハンセン病療養所に入所したひとりの女性、双見美智子さんの思いを描い
たものだ。
当時、ハンセン病は危険な伝染病とされ、隔離政策がとられていた。そのため、双見
さんは施設に入所する際、まだ1歳に満たない娘と別れざるを得なかった。その後、
57年間、彼女は娘に会えないまま人生を過ごしてきた。この作品の作者である天木リ
ウは双見さんに寄り添うようにしてその思いを一言一言聞き取ろうとする。そうした
作り手の息づかいが感じられる作品だ。

一体なぜ、家族を引き裂いてまで隔離する政策がとられたのか。その背景は、続いて
上映された作品『ソロクト・楽生院 〜日本が残したハンセン病隔離政策〜』の中で
解説されている。
それによると、明治維新以降、いわゆる「文明国」入りをめざしていた日本が、欧米
ではすでに過去の病とされているハンセン病の患者が日本に数多く存在するという事
を「国辱」であると考え、いわゆる「らい予防法」を制定。そして「ハンセン病の伝
染力はすでに微弱であるとわかっていたにも関わらず、隔離を進めるために恐ろしい
伝染病だと強調し国民に恐怖心を植え付けた」とされている。
ハンセン病では患者の外見に影響が表れる事も多いため、差別や偏見はより増長され
た。こうして数多くの人々が、それほど感染力の無い病気であるにもかかわらず強制
的に隔離されたのだ。

その問題点が指摘されていたにもかかわらず長く続けられてきた隔離政策。国の誤っ
た政策によって被害を受けた人々に対し、2001年にようやく補償金が支払われるよう
になった。
ところがこの問題は、日本の中だけで解決すればよいわけではなかった。かつて日本
に植民地支配されていた海外の国にも被害を受けた人達がいたのだ。それらの人達に
対し日本政府は補償を拒み続けてきた。補償を勝ち取り日本政府に隔離政策の誤りを
認めさせるための裁判が行われ、補償請求弁護団の依頼で裁判用の資料として作られ
たのが、この作品だ。
舞台となっているのは、かつて日本がアジアの国々を植民地として支配していた頃に
作られ、現在でもハンセン病の療養施設として使われているソロクト更生園(韓国)
と楽生院(台湾)だ。
それぞれに入所している人達から、当時の隔離政策により受けた非人道的な「治療」
や強制労働、そしてすさまじい拷問の話が語られる。いわゆる従軍慰安婦や炭坑など
での強制労働だけではなく、こんな加害の歴史も日本にはあったのだと驚かされる。


裁判用として作られた作品だが、しっかりと作られており、もっと多くの人に観ても
らうべきだと思う。
この作品が資料として使われた裁判の2005年に出された判決では、韓国での隔離政策
に対する判決と台湾での隔離政策に対する判決が、ともに東京地裁で行われたにもか
かわらずまったく逆の判決が出た。その後、2006年に「ハンセン病補償法」が改正さ
れ、日本の植民地時代に韓国・台湾の療養所へ強制隔離された被害者へも、日本人と
同等額の補償金が支払われることとなった。
形の上では「解決」したわけだが、受けた被害は無くなったわけではないし時間は取
り戻せない。そして偏見もいまだに存在している。

今回の上映会は、参加人数こそ少なかったものの実際にハンセン病で隔離されてきた
方や支援活動をしている方など、さまざまな人が集まった。二次会では、最初に上映
した作品に対し「あの作品だけ観ると誤解をされる」という意見もあった。たしかに
最初の作品に登場する双見さんは「強制収容」されたわけではなく、病気である事を
知って自ら入所した人である。そういう意味では隔離政策の被害を受けた方やそうし
た方の支援をしている側からすると「広く伝えたい例」ではないのだろう。
しかし、自ら進んで入所した人であっても国の誤った政策による社会全体からの偏見
によって隔離施設に入り娘と会えなくなってしまったのだからやはり被害は受けてい
るわけだし、そもそもドキュメンタリーとは、被害を訴えたり支援したりといった
「運動」側の論理とは別の観点や切り口で作られるべきものだとも思う。

僕自身も映像作品を作っているが、仕事として成り立つように作っているという事も
あり純粋に「ドキュメンタリー」と呼べる作品は1本だけで、他の作品はどちらかと
いうと「ドキュメンタリー」ではなく「プロパガンダ」か「プロモーション」または
「PRビデオ」だ。
音楽や映像を含めすべての表現は、何かの目的の為に作られると表現としてのパワー
が失われ、作品として自立したものではなくなる傾向がある。
今回上映した『ソロクト・楽生院 〜日本が残したハンセン病隔離政策〜』は裁判用
に作られたものなので「プロパガンダ」的な出自の作品だが、なかなか力強いし成功
していると思う。ただ、作者の土屋トカチ自身は依頼されて作った仕事ゆえのフラス
トレーションを感じていたらしく、その後、再び台湾を訪れて別の作品『たのしき 
われらが楽生院』を作り、先日上映した。これもいい作品だった。ただ、あくまで前
の作品があってこそのものだと思う。
社会問題を取り上げた作品がどうあるべきかというのは、非常にむずかしい。


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