第43回
VIDEO ACT! 上映会 家族を映すカメラ〜
上映作品 「belief (ビリーフ)」
上映会報告

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報告文:土屋豊

 「それ、ちょっと独善的じゃないの?」、「いや、監督の意図なんだから!」、「うるさい!人の意見はちゃんと聞きなさいよ!!」司会者のコントロールを超えて、大きな声が飛び交った。作品上映後のトーク&ディスカッションの光景である。
 久々にビデオアクトの上映会らしいシーンだった。悪意的な攻撃では全くない。みんなひとつの作品に対して、真面目に、真剣に、自分の意見を言い合っていた。やっぱり、ビデオアクトの上映会はこうでなくっちゃ、と私は思った。

 去る2月4日、ビデオアクトの43回目の上映会が行われた。上映会のタイトルは「家族を映すカメラ」で、上映作品は『belief(ビリーフ)』(監督 : 土居哲真)。ある朝、自分の母親がカルトに入信していることを知った息子である監督自身が、当の母親や兄、義姉、宗教学者、心理学者、弁護士らと対話を重ねる作品である。  
 
私が一番印象的だったのは、監督と母親が対話を交わすシーンのカメラワークだった。監督自身が回すカメラは、執拗に母親の顔をクローズアップする。もし、これがテレビのワイドショーのカメラだったら、そのあざとさや暴力性によって不快感を与えるだけかもしれないが、息子である土居監督のカメラワークはなぜかやさしい。これは「鏡」だ、と私は思った。鏡を覗いて自分のニキビの状態を注意深く観察するように、土居監督のカメラは、母親がカルトに入信した理由をその表情から探ろうとする。その観察の注意深さ、繊細さは、入信した理由は息子である自分にあるのかもしれないという自戒の念から発するものであるように思われた。

 作品の上映形態にも、監督である息子と主人公である母親との微妙な関係性が現れていた。なんと、作品内の対話の監督のセリフ部分を、上映会場で監督自身がリアルタイムで 発声したのである。この「活弁」方式は、非常に面白かった。スクリーン内の"そこ"と上映会場である"ここ"が演劇的に繋がると同時に、もう一人の「当事者」としての監督が観客の前に晒されたわけである。この「活弁」方式は制作当時から前提とされていたとのことで、今回、それが実現できて本当に良かったと思う。

 さて、このような仕掛けもあったからか、上映後のディスカッションは大いに盛り上がった。どこから上映情報を仕入れて頂いたのかよくわからないが、30名弱の多種多様な人たちが集り、様々な忌憚のない意見が飛び交った。冒頭に書いたやりとりは、「どうして、宗教学者や心理学者の肩書きや名前をテロップで入れなかったのか?」という質問から始まった。監督は、「テロップを入れると"権威"のある人の発言になってしまうから」というようなことを答えたと記憶しているが、最終的には、「プロの仕事じゃねーよ」的な発言まで飛び出し、思わず笑ってしまった。勿論、こういうことに「正解」はないわけだが、この答えのない問いを巡って監督を交えてあーだこーだと話し合うことが上映後のディスカッションの醍醐味である。監督という"権威"と観客の境界がない、ビデオアクトならではの雰囲気を土居監督も楽しんで頂いたと思う。  また、参加者の中には、今は亡くなってしまった自分の母親が監督の母親と同じカルトに入信していて、そのことがずっと心に重く残っていたが、この作品を観たことで、自分の母親の気持ちが少しわかったような気がした、というようなことを発言してくれた人もいた。こういうことをその場にいるみんなで共有できるから、上映会はやめられない。

 更に場所を移した打ち上げでは、「私の姉は教祖」(!?)とか、ここでは書けないような話が飛び出し、何とも有意義な一晩であった… 今回来られなかった皆さんも、次回は是非、お越し下さい!

関連ホームページ
belief(ビリーフ)公式ウェブサイト

上映会・アンケートより(抜粋)

■リアルタイムナレーションは変則的で幾分かの面白さを感じました。無声映画時代の弁士や音楽程の一体感とはまた違った意味での 映画内容に関しての(映画後トークショーで触れた)面白さでありました。いっそ無声映画ではとも感じました。そういう意味で中途半端 感も感じもしましたがそれもまた一つの作品という事で納得です。他にも内容に関して中途半端などと攻撃(意見)している方達もいましたが、そんな強い意見をも含めての作品だと理解しました。その後に擁護した女性の方の意見も前述の意見があればこそでまさしく全体で一つという感じです。

■個人的に宗教(特に原理主義的な「カルト」とか)について勉強しているので、 とても考えさせられました。(いろいろ思ったことはあったのですが) 憲法でも信教の自由は保障されているし、「カルト」であろうと本人がしあわせなら、 いいんじゃないか。でもやっぱりお母さんが統一教会に行っちゃった「原因」は何か、考えてしまう。その優しいまなざしが、よく映し出されていたと思います。 宗教は、私がキリスト教を信仰すると決めた時、周りから「宗教とは弱者のためのもの」と 言われて、考えるようになりました。でも本当に、「弱者」とは誰のことでしょう。

■カルトの語りの微妙さ、善悪の線の引きにくさが とてもよく判りました。(実感できました) その意味で適切な作りかただと思います。 カルトの見えにくさ、家族のもどかしさも伝わってきました。

■特に問題意識もなく興味先行で来ましたが、母親を田舎に残して上京してきているので、同じ状況だったら自分はどうするだろうということを考えさせられました。チラシに自分の母親と話したくなる映画とありましたが、そのきっかけをくれる映画でした。

■母親に正面から向き合い、その姿を作品として出すこと。素敵だと思いました。私には、恥ずかしかったり、苦しかったりしてできないなと・・・。 監督の好きな表現でつくる自由があると思うので 批判は気にしなくてもよいと思いました。家族愛、いいなと思いました。

 

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